2020年7月18日土曜日

「旧事諮問録 上 下 岩波文庫」 再読

この本は、30年数年前 手塚治虫さんの愛読書だと言うのを何かで読んで、それで興味をそそられて購入したのだと記憶している。

明治の世になって、旧幕府時代の要職に付いていた人々からの聞き取りをまとめた内容だが、細かいところは忘れてしまっていた。 改めて読み返すと発言者の多様な職種が興味深い。

 将軍のそばに使えていた御小姓組取、財政の御勘定組頭,司法の評定所留役、大奥の中﨟、御次(奥女中),外国奉行、御庭番(所謂伊賀忍者)など、それぞれリアルな体験を語っていて面白い。

今回気が付いたのは、幕末の政治や外国との対外関係や当時の役人の人員配置状況などではなく、日本語についての興味深い発言に気が付いた。長くなるが書き出してみる。

旧事諮問録 下巻 旧幕外国奉行などを歴任した 竹本要斎の発言。

「御質問の前に当たりて一言申し上げて置きますが、幕府中の御話をしまするに、現今の言葉に改めて御話をいたすと、情の移らぬ事がある。それ故、やはり公方様 益御機嫌能恐悦奉存候という調子で、御の字が付かぬと情合が移らぬようであります。しかし中には、そのまま御話をすると甚だ現今の人の御存知のない事もあります。速記の方も、洋語を筆記なさるよりも難しいこともあろうと存じます。」   この聞き取りは、明治23年から24年にかけて行われていて、幕府解体からおよそ20年ほどの間に、所謂武家言葉が廃れている事実を物語っているわけで、今の言葉で言うと、官僚用語が消滅しかかっている状況とでも表現できるのかもしれない。

現在も、ヤバイヨ、チョウ、などと、年寄りの私も使っている日本語があるが、これからどんな日本語になっていくのだろう。





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